CD-Rブランドで音は変わるか

なにはともあれ、以上の経験、考察より、CD-Rのブランドで音が「変わらない」と主張する方々には大変申し訳ないのですが、そういった方々は次の2通りのどちらかに分類できるのではないかと考えています。

  1. 違いが認識できる聴覚をお持ちでない方(ごめんなさい)
  2. CD-Rの書き込み/プレス精度ごときに足を引っ張られるような、残念再生機に遭遇したことがない「幸運」な方(嫌味ではなく)

筆者私見

さて、私自身がCD-Rの購入時に音質を気にするかというと、答えはノーです。今となってはCD-Rから直接音楽を聴くということが皆無に近いため、こだわる必要がなくなってしまったというのが実情です。現在は音質よりも製造の精度が高く、化学的な風化に強く、長期間の保管に耐えられることの方が重要であると思われます。

もはやCD-Rを使うこと自体が稀ですが、私が現在ストックしているブランドは音質こそ比較していないものの、25年近く前に製造された愛機のコブラトップでも、ほぼ確実に再生できる数少ないCD-Rメディアです。今のところ、風化によりデータが読めなくなったということもありません。

より踏み込んで意見しますと、CD-Rによる色付けや個性といったものも、無いと考えます。あるのは、精度が高いか低いか、それだけです。高精度であれば、原音に近い再生音が得られます。逆に精度が低いほど、耳にしている色付けや個性とされるものは、形は様々であれ原音にはない「歪み」です。先に述べたように、再生環境が変われば発現しない可能性すらある特性を色付けと呼ぶのは苦しいものがあります。

少し話が逸れますが、ヒトの聴覚は優秀で、音の残響特性によって空間を認識する能力を持っています。ホールやトンネルでパチンと手を叩く場面をご想像ください。残響が跳ね返ってくるまでにどのぐらいの時間を要するかで、おおよその空間の広さを認識できます。また、残響の周波数成分によって、自分を囲んでいる壁がコンクリートか、あるいは木材か…壁面の硬度さえ、ある程度は把握できるでしょう。ミックス時に、薄くかけたディレイを左右に振ることで広がりを演出するのは、まさにこういった聴覚の特性を利用したものです。

さて、もしその反射音が、元音とは極端に違うピッチになって跳ね返ってきたらどうでしょう? ヒトの聴覚はそれを「反響して戻ってきた音≒空間の特性を知覚するヒント」と認識するでしょうか?

話を戻します。先ほど、ピッチがヨレヨレになったCD-Rと再生機の組み合わせについてお話ししました。私が経験したほど極端な例でないにしても、もしCD-Rの特性によってわずかにでも再生速度、ひいては音程に揺らぎが生じるとしたら、ヒトの聴覚が空間認識時に参照している情報が、ひとつ損なわれている可能性があります。

ブランドの異なるCD-Rを評して、一方が「より奥行きがある」他方が「シャキっとしている」と感じたのなら、それは単に前者が元々あった空間に関する情報を維持しており、他方は精度が低く歪んでいる…と、私なら解釈します。

これだけはやめて

ここまでのお話でCD-Rのブランド、あるいはCDプレスによる音質差が、あくまでその盤から直接視聴されたときに影響するものであり、それすら一旦リッピングすれば(あるいはそれに近いかたちで再生ができる対策のなされた再生機であれば)盤面の品質差はチャラになることを説明しました。下手にプレスされた、あるいは焼かれたブートレグのCDを、一旦リッピングしてきちんとCD-Rに書き直すことで音質が向上した…といういつしか聞いた噂話も、あながちありえなくはないように思います。

この事実を無視して制作を行う場合に起こりえる最悪のケースは、CD-Rやプレスの違いから逆算して、マスタリングの方向性を決めることです。たとえば「このメディア(またはプレス工場の製造ライン)は、少しハイが元気になる傾向があるから、マスタリング時はハイは少し控えめにしておこう」などなど…これを行うと、精度の高い再生機にかけたとき、あるいはリッピングして再生したとき(リスナーに限らず、配信業者が行うことも考えられます)、その配慮はマイナスに作用します。

Scroll to top