Spotify公式資料より意訳(2018/12/8公開)
Spotifyのシステム変更について、2021/1/18に更新した内容をページ末尾にまとめました。
Spotifyが対応するファイル形式は?
入稿する際はFLACとWAVを受け付けるけど、FLACの方がこっちで取扱いやすいから嬉しいな!
入稿したファイルはどのように処理されるの?
受け取ったデータは次のように変換するよ!
- ファイルが破損していないこと、コーデック&コンテナが認識できることを確認するよ!
- 44.1kHzのWAVに変換するよ!(ビット深度は変更しないよ)
- 配信用に次のフォーマットに変換するよ!(どれが再生されるかはリスナーの環境や設定次第)
- Ogg/Vorbis [96, 160, 320 kbps]
- AAC [128, 256 kbps]
- HE-AACv2 [24 kbps]
ReplayGainを使ってラウドネスを測定するよ!
(訳注:測定したラウドネスはメタデータとして保持されるだけで、音声ファイル自体に影響するものではない)
あとファイルの暗号化もするけど、これは音声に影響を及ぼすわけではないよ!
Spltifyは、マスタリング時のレベルでファイルを再生してくれるの?
いつもそうとは限らないんだ。なぜならSpotifyはリスナーが曲を再生するときに≪ラウドネス・ノーマライゼーション≫を実施するからね。
Spotify向けにマスタリングするときのコツをいくつか教えちゃうね!
・ターゲットラウドネスは-14LUFS(Integrated)に設定して、トゥルーピークは最大でも-1dB TPになるようにするといいかも! これはSpotifyが行う非可逆圧縮(Ogg/Vorbis/AAC)方式でエンコードする際にベストの設定で、エンコードによる歪みが最小になることが保証されるよ!
・どうしても-14LUFS以上で収録するときは、トゥルー・ピークが-2dB以下になるように気をつけてね。音圧が高いトラックほどエンコードの際に歪むからね!
Spotifyはどうやってラウドネスを測定するの?
いま(2018年12月現在)はReplayGainを使っているよ。これはSpotifyがサービスを開始した当時、ラウドネスを測定するもっとも標準的な方法だったんだ。
でも将来的には”ITU-1770″っていう、もっと新しい標準に移行する予定なんだ。
2021/1/18更新:2020年12月頃にITU-1770に移行を開始しました。詳細は後述します。
入稿時のデータは、この方式でチェックするのがオススメだよ!
ReplayGainはラウドネスを特定の単位で表すわけじゃないから「Spotifyの規準はLUFSで言うとこの辺でーす」とは言えないんだけど…ReplayGainのアルゴリズムよりは3dB高く設定していて、これがITU-1170規準で言うとだいたい-14LUFSに相当するんだ!
ラウドネス・ノーマライゼーションってなに?なんでそんなことするの?
Spotifyには、世界中から音楽が送られてきていて、ミックスやマスタリング時のレベルも様々なんだ。だから、リスナーの音楽体験を最大化できるよう、音量バランスをとるためにラウドネス・ノーマライゼーションを行うんだ。
あと、音の大きいマスターも、小さいマスターも、等しくみんなに聴いてもらえるようにしたいからね。音の大きいマスターは不当によく聴こえるからね。これで理不尽な競争がなくなるといいな。
備考:SpotifyのWebプレイヤーと、サード・パーティ社製デバイス(スマートスピーカやTV)ではラウドネス・ノーマライゼーションは行わないよ!
Spotifyはどうやってラウドネスを調整するの?
みんなから受け取った音声ファイルは、さっき説明したようにOgg/Vorbis/AACに変換するんだ。
このときついでに、ファイルのラウドネスを測定した結果をメタデータとしてファイルに書きこむんだ!
このファイルを受け取ったプレイヤーは、規準レベルに合うよう再生音量を上下するんだ。
エンコード時にはファイルのレベルを変えるわけではないよ。
これでラウドネス・ノーマライゼーションなんて要らないやー!ってリスナーも満足だね!
・音量を下げるのはこんなとき
-14LUFSを越えるファイルは、これに合うよう再生時の音量を下げるよ!
レベルを下げるだけだから音が歪んだりはしないね
・音量を上げるのはこんなとき
-14LUFSに満たないファイルはレベルを上げるんだ。このとき音がクリッピングによる歪みが生じないようリミッターも通しちゃうよ!リミッターは、サンプルピークが-1dB、アタック5ms、ディケイ100msに設定されているよ!
リスナー側で再生音量を調整することはできるの?
Preiumプランのユーザは、次の中からラウドネス・ノーマライゼーションの設定を選ぶことができるよ!
- Loud …-11LUFS規準
- Normal …-14 LUFS規準(デフォルト)
- Quiet …-23LUFS規準
これは再生機器の出力が足りない人も、逆に静かな環境で聴くからリミッター要らないやー!って人にも満足してもらいたくて用意したんだ!
入稿したいアルバムは、意図的に音の大きなトラックと小さなトラックが混在しているんだけど、これはSpotifyで問題になる?
んなこたーない!
リスナーがアルバムを再生するときは、アルバム全体を通したラウドネスが-14LUFSになるよう考慮されるよ。だからトラック間の相対的な音量は変わらないんだ!これで音の小さなトラックもばっちりアーティストの意図どおりに聴いてもらえるね!
ただし、アルバム内のトラックを並べてシャッフルモードで再生したときとか、他のアルバムの曲も併せて聴く場合には、トラック単位でラウドネス・ノーマライズされるよ!
自分の曲がSpotifyでは他の曲ほどラウドに聴こえないんだ。〽ななななんでだろう?
曲がどの程度大きく聴こえるかは、ラウドネス・ノーマライゼーションがマスターに対してどのように作用するかによって変わるんだ。
いくつか考えられる理由を挙げてみるね
・-14LUFS規準にしてピークも活かしたマスターは、Spotifyで再生されてもピークはそのままになるよ。一方、-6LUFS規準のマスターはどんなに頑張ってもピークが-8dBまで下げられちゃうからね。この2つは聴感上は同じレベルで再生されるけど、よりダイナミックな曲の方がピーク部分はラウドに聴こえるよね
・さっきも説明したけど、アルバムの中で相対的に音が大きかったり小さかったりするトラックはシャッフルしたときに意図しないレベルになるかもね
・ミックス中に可聴域外の高周波が含まれていたりしない?ReplayGainもITU-1770も、ラウドネス測定アルゴリズムはローパスフィルタを含まないからね。高周波も音のエネルギーとして計上されちゃうよ
・トルゥー・ピークが-2dBを越えちゃうような、めちゃくちゃ音のデカいマスターだったりしない?こういうマスターのエンコード時に生じる余分な歪みは、人間には聴こえなくてもラウドネス測定アルゴリズムはレベルの一部として計上しちゃうんだ。
・ひょっとして再生機器の特性…かな?ラウドネス・ノーマライゼーションは再生環境の特性までは考慮しないからね。たとえば低域がドカドカ出る環境とか設定なら、当然低域の比重が大きいトラックは大きく聴こえるよね!
・いまのところはReplayGainのアルゴリズムを使っているからね。ITU-1770規準でマスターのレベルを設定した場合、この二つのアルゴリズムの違いが音量差になって現れることがなくもないかも。
※意訳ここまで
2021/1/18追記
2020年12月頃よりSpotifyのラウドネス正規化基準が、それまでのReplayGainから、国際基準であるITU-R BS.1770ベースに変更されました。これに伴う、以下の変更点は留意に値するかもしれません。
従来のReplayGainでは、トラック中の最もラウドな部分に重みづけがなされていました。つまり曲中でレベルが突出してラウドな箇所があればそこが重視されていたため、逆にそれ以外の箇所のレベルが低くても、全体のリダクション量への影響は比較的軽微でした。これに対しITU-R BS.1770は、より「全体の平均」に近い計測方法をとります。これにより、多少レベルが突出する箇所があっても、短時間であれば全体のリダクション量への影響は逆にあまり大きくありませんでした。
より具体的な例として、たとえばRMSの変動が少ないタイプの楽曲は、よりダイナミックな曲に比べるとこれまでよりも大きなリダクションがなされる可能性があります。
これは一見デメリットに思われるかもしれませんが、今回YouTubeをはじめとするプラットフォームと同じ国際基準がSpotifyでも採用されることになりましたので、配信先ごとのリダクション量の違いを意識する必要がなくなることでクリエイターはコンテンツを作りやすくなるともいえます。
なお、少なくとも下記の理由から、新しいアルゴリズムの移行は瞬時ではなく段階的に行われるものと考えられます。
- Spotifyが配信する膨大なアーカイブの全スキャンには、まだ時間がかかる(らしい)。
- 新しいアルゴリズムが適用されるためにはプレイヤー(再生アプリ)側でもアップデートが必要であり、当面はReplayGainベースの正規化のもとで視聴するユーザも混在することになる。
その他、変更の詳細や対応策については、英文ではありますがこちらの記事によくまとめられています
最後に…
ITU-R BS.1770規準のラウドネスを確認するときは、一発ポン!で測定が終わってトゥルーピークまで教えてくれちゃうiZotope RXがオススメです。