モノラルのリバーブってどんなときに使うの?

Q:
モノラルのリバーブってどんなときに使うの?
あとPANはどう振ればいいの?
ステレオのリバーブとどう違うの?

Sound On Sound誌 2019年2月号
“Q. When should I use mono reverb as opposed to stereo reverb?” より意訳

原文

A:
モノラルのリバーブが適したシチュエーションの一例は、ミックスをごちゃごちゃさせたくないとき。

ステレオリバーブの性質として、たとえモノラルのソースを入力しても出力はステレオ音像全体に広がるよね。さらに、ソースを左右いずれかにPANで振り切っても、リバーブは左右の端から端まで均等に広がることもある。なので、ミックスの明瞭度を確保するのが難しいときは、一部のリバーブはモノラルに切り替え、ソースの位置に重ねるようにPANを振ってやるといいかもしれない。

これの応用もひとつ紹介しよう。たとえばセンターからはずれた位置にPANを振りたいパートがある。しかしながら、左右対称に振ってバランスをとれるパートが他に存在しないアレンジに直面した場合…このようなときは、ソースと左右対称になるようモノラル・リバーブを振ることでバランスを取れる。また、こうするとセンターをクリーンに保つこともできる。これによりボーカルをはじめとするリード楽器がより明瞭になる。

モノラル・リバーブのもうひとつの大きな利点は、自然な空間に聴こえ「ない」こと。このため、ステレオ・リバーブほどにはソースを音像の奥に追いやることがない。このようにモノラル・リバーブを使用するとボーカル/楽器音などを、リスナーから遠ざけることなく自然なサスティンを追加することができる。

ただし、リバーブの使い方をここまで話した「モノラル」「ステレオ」の二元論で考えることは、リバーブの音像の幅についての数ある選択肢を自ら制限することにつながりかねない。

私自身、ときどきモノラル・リバーブを使用することはあるが、それ以上にリバーブ出力の幅をM/S処理で調整することの方が一般的だ。たとえば、スネアのリバーブは幅を狭めることでドラムセット内での収まりがよくなる。逆にドラムセット全体に送るタイプのリバーブは、幅を広げることでリバーブのセンターを手薄にすることがある。これが特に効果的なのは、オーバーヘッドのマイクの方を、音像が広すぎたがために狭めている場合。センター部分はオーバーヘッドに収録された自然なアンビエンスが適度に埋めてくれる。

もうひとつ、チャートインするEDMなどでよく聴かれのが、スピーカの外から聴こえるまで広げたリバーブをミックスに薄く混ぜることで、より大きなステレオ音像を得るテクニックだ。このように作られたリバーブはモノラル互換性を失い、場合によっては完全に消失することもある。しかし、元々リバーブには音楽的な機能(musical function)がないため問題になることは稀だ。モノラル化によりリバーブが消えることぐらい、広げすぎた大事なラインが消えることに比べたらどうってことはないだろう。


訳者の最近のお気に入りのリバーブはコチラ

Scroll to top