Q.ミックス中にはいくつリバーブを使えばいいの?

Q.
ミックス中にはいくつリバーブを立ち上げればいいの?複数のトラックをひとつのリバーブに送るのはアリなの?

原文: “Q. How many reverbs should I use?” Sound On Sound誌 2019年3月号

A.
リバーブはいくつ立ち上げるべきか?

正解は「必要なだけ」…というと適当に答えているように思われそうだけど、実際そのとおりで、すべては状況次第なんだ。ボク自身、リバーブをまったく使用しなかったミックスもあれば、10以上使ったケースもある。いずれも適切な状況下であれば間違いにはならない。

たとえば、いままさに手掛けているアコースティック主体のバンドのアルバムでは、曲ごとに4,5種類のリバーブを使っている。内訳は、

  • リバーブ・タイムが短くステレオを幅を狭めたもの…これはスネアをドラムセットになじませるために使用している
  • アンサンブルの一体感を高めるための、短めのアンビエンス系
  • より広がりを出すためのLarge Hall系 ボーカルや撥弦楽器のサスティンを伸ばすための、長めのPlateが1,2種類

ざっとこんなところだ。

逆に、リフを重用するロックバンド”Magician’s Nephew”を手掛けた際は、まったく違うものを使用した。スネアとタムをドラムセットになじませるための濃いめのアンビエンス、狭い地下室で録ったようには聴こえないようにするためのLarge room、そしてボーカルをミックスになじませるための軽いアンビエンスといった具合だ。

この2つの例ではいずれも、個々のリバーブは具体的な目的をもって投入されている。そしてこの「目的」は、必然的に音楽のスタイルや録音状況によって異なってくる。

たとえば、アコースティック・バンドの録音では、けっこうな量のカブリが生じる。このような素材に対しては、わりと自然なアンビエンスがよく合った。Magician’s Nephew のケースでは、ドラムセットは別として、トラック間のカブリは皆無だった。このときはリファレンスに使用していた同ジャンルの競合するタイトルと比べた上で、かなりドライなまま残しても問題がないと判断した。

ここまででおわかりだろうが、本当に気にするべきなのは、リバーブを立ち上げる個数ではなく、「ミックス中のどのパートがリバーブを必要としているか」という点だ。

次に、複数のトラックを単一のリバーブに送るべきかどうかについて。

著名なエンジニアの中にもこれを嫌う人はいるが、個人的には問題だとは思ったことはない。確かに、Send先でリバーブに入る前の音にディエッサ、ダッキング、EQといった処理を加えるなら、単一のパートを送る方が有効だろう。しかし、ボク自身は複数のパートを送ることに抵抗はない。むしろ、自分にとってリバーブを使う理由の大半は、複数パートを送ることで録音時には得られなかったアンサンブルの一体感を高めるためだからね。

先ほどのアコースティック・バンドの話に戻ると、リバーブの多くはアンサンブルを結合するために複数のトラックを送る使い方をした。一方、SOS 2018年6月号に掲載されたMix Rescueのコラムで取り上げたLingua Funqaのミックスでは、それぞれのリバーブにひとつか、せいぜい2つのパートしか送っていない。これは、チャートにありがちなサウンドのように、各パートがそれぞれ独立した空間を占めているような、いわば非現実的なサウンドを志向した結果だ。これはリスナーの耳を引き付けたり、コントラストを強調する上で有効だ。

まとめると、リバーブやSendの数は、さほど気にするべきものではない。手掛けているのがどのようなスタイルの音楽であれ、ひとつひとつのリバーブを立ち上げる目的を常に意識しさえすれば、大きな問題になることはないだろう。


訳注:
原文では質問が「ひとつのトラックを複数のリバーブに送るのはアリ?」となっていたのに対し、返答では逆に「複数のトラックをひとつのリバーブに…」になっていたので、整合性をとるために質問を改めました。
原文の質問の答えも気になるところですネ

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