ニコニコ動画のラウドネス・ノーマライゼーションを検証する

YouTubeやSpotifyといったストリーミング事業者がラウドネス・ノーマライゼーションの運用を開始して久しくなりますが、これに対しニコニコ動画はこれまでに同様の仕組みを導入する気配がありませんでした。

しかし、ついに今年2月末のアップデートで、ニコニコ動画でもNintendo Switch用アプリでの視聴時に限り、ラウドネス・ノーマライゼーションの運用が開始されました…あるいはそのようにも受け取れるアナウンスが公式になされました。

2020年1月8日追記:このページの内容は、Nintendo Switch用視聴アプリに関するお話です。2020年1月29日より運用が開始されるWebプレイヤーについては、新ページをご覧ください。

ニコニコインフォ (2019年2月28日更新分)

ご覧のように、修正点一覧の末尾には「音量が大きすぎる動画の最大音量を調整し、聞きやすくしました」とあります。

そこで、実際に再生音量がどのようになっているか確認してみました。

検証方法

  1. SwitchのHDMI出力にBlackMagic VideoAssistantを接続し、録画(ProRes LT@720p)
  2. 取り込んだmovファイルをAdobe Premiereに読み込み、動画の再生開始から終了までの範囲を48kHz/24bitのWAVとして書き出し
  3. 書き出したWAVをAdobe Audionに読み込んで、振幅統計をスキャン

結果

下の表をご覧ください。

この表から、おおよそ次のことがわかります。

  • 6作品スキャンしたうち、3つはピークに関係なく-24LUFS程度に揃えられていた
  • 残り3つの作品は、それぞれおよそ-21~-19LUFS
  • いずれも波形にはリミッティングの痕跡が見られるので、おそらくPCでの再生時に比べ少なからずリダクションはなされている

投稿前のファイルがすべてピーク・ノーマライズされていたとすると、表の最上段にある「ピーク振幅」は、おおよそリダクションがなされた量を意味しますので、表右端の作品は再生レベルがおおよそ21dB下げられていることがわかります。

レベル差の理由について

曲の傾向を見る限り、全6本が等しく-24LUFSに揃えられてもよさそうなものでしたが、そのようにはなりませんでした。
この理由について、いくつか仮説を立ててみました。

  • システム側でまだラウドネスの測定が完了していない作品は、一律12dBほど再生レベルを下げる(暫定)処置がなされている
  • 元々の音声トラックのラウドネスに応じてペナルティの加減が異なる(-24LUFSを下限として)
  • システムのバグ

今後の対策

Nintendo Switchで視聴するニコ動ユーザを切る捨てるのであればマスタリング時のアプローチは従来どおりでもいいでしょう。しかし、再生音量が下げられることが気になる方は、Switch向の音源を別動画として(それとわかるタイトルをつけて)投稿するのが有効かもしれません。

再生音量を決定するタイミングについては、再生開始前に音声トラックを視聴者に一旦すべて送り、プレイヤー側でラウドネスを測定しているとは考えにくいので、おそらく作品ごとのラウドネスに関する情報はシステム側で管理されているのでしょう。今後、このデータを使用してWebプレイヤーでも同様の運用が開始されないとも限りませんので、必要になればいつでも投稿できるよう、リミッティングを控えたバージョンのマスターも手元に残しておくのが賢明かもしれません。

余談

今回のレベル測定時には、Excelへのコピーがしやすいという理由でAdobe Auditionを使用しましたが、ラウドネスやピーク値を瞬時に測定する作業はiZotope RXでも可能です。検討中の方は、これを機会に導入されてみてはいかがでしょうか?

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