CD-Rブランドで音は変わるか

なぜメディアで音質が変わるか?

さて、なぜそもそもデジタル媒体であるはずのCD-Rのブランドが、再生音に影響するのでしょうか? 0/1の羅列を盤から読み取るだけであれば、音が聴こえるか、盤面を読み取れずに聴こえないかの2択となり、劣化や変化はありえないはずです。

音が変わる理由については、もう何年も前から仮説だけはたくさん目にしています。

仮説曰く「ピット(CDやCD-Rの表面にある、データを表すミゾ)の書き込みが甘いと、0/1をアナログに変換するタイミングもまた精度を欠き、時間軸に揺らぎから歪みが生じる(FMシンセシスの理屈)」

仮説曰く「上記の理由によりタイミングが揺らぐと、駆動部分…回転するモータや読み取りレンズの位置が調整を要し、そのたびモータに負荷が掛かり、これに起因するノイズが電源ラインや空中を経由して音声信号のラインに乗る」

仮説曰く「反射面の化学物質に含まれる金属の配合によっては帯電のしやすさ、ひいては静電気の影響に違いが云々」

etc、etc…

一方の懐疑派の主張は、読み取りごとに結果が異なるなら、会計データのバックアップにCD-Rなど使えたものか?
(否、変化などない)といったものです。

現にピッチがヨレるほどに出力結果が違う以上、双方の言い分を満たす条件としては…

最終的に再生機のD/Aコンバータに到達するデータ自体は変わっておらず、それをアナログ変換する際の取扱い…D/Aコンバータからの出力を送り出すタイミング精度や、アナログ変換後の信号品質が鍵になるといえそうです。

影響は、あくまで再生にメディアが関与するとき

CD-Rからリッピングしたデータを書き込み前のデータと比較するとバイナリ一致することからもわかるように、CD-Rブランドごとの特性が影響するのは「リアルタイムでの再生時にそのメディアを介したときのみ」です。

では、リアルタイムで「ない」再生とは、どんな場面でしょう?

最初に思いつくのは、リッピング済みのデータを再生する場合です。また、CD-Rから再生した音声をS/PDIF経由でハードディスクに取り込む場合も、CD-Rメディアによる影響はありません。これらの場合、よほど劣悪な環境でなければ、ハードディスクに取り込まれたデータはCDに書き込まれる前のものと一致します。ハードディスクに取り込んだデータを次に再生するとき、CD-Rを「再生時には」介さないので、CD-Rメディアの特性はチャラになります。

CDの話ではありませんが、同様に0/1である以上、たとえばネット販売されているPCMデータを購入してダウンロードするとき、経由するサーバの品質によって音声が劣化するということはありません。

あるいは購入したデータを保存するHDDのブランドで音質が変化することは…再生するPCがHDDと電源ユニットを共有している以上、いまのところ影響を完全に否定することは難しいように思います(かといって肯定するかどうかについての私見は「保留」とさせてください)。

また、数あるデジタル媒体の中でもCD-Rに関していえば、ブランドごとの精度差がどの程度再生音に現れるかは、デッキとの相性もあると考えられます。私が経験したほど極端にピッチがヨレるケースがもっと一般的であれば、違いはある!という認識がもっと広まっているはずです。

再生機の設計については詳しくないので想像の域を出ませんが、高精度なリクロッカを搭載し、また外部ノイズに対して適切な対処がなされた機種ほど、おそらくメディアごとの出力音声の違いは少ないのではないかと想像します。

プレスされたCDとCD-Rでは反射面の光学特性が異なり、CD-Rがコモディティになる以前の再生機は、そもそもCD-Rの再生を想定していません。ですので再生機の発売された時期によっても、相性は異なると思われます。

極端な話、再生前にCDを高速リッピングして内蔵RAMに取り込み、その後に再生を開始するデッキがあれば、CDの特性は取り払われることになります。むしろCD1枚の一時記憶に必要なせいぜい1GBに満たないRAMのコストなどたかが知れている現在、こういった機能を備えた再生機が市場に少ないことを不思議に思います。

ところで、興味深い記述が、リッピング用ソフトとして名高いExtract Audio CopyのFAQページにありましたので、ご紹介します。

Q:Then how does it come that a CD that plays on my standalone CD player without any pop or any other error, makes that difficulties on extraction?
A:Standalone CD players perform oversampling and some more error correction. Further, if the error is too big to be corrected, it will perform “error hiding”. That means that the player will hide the error in a way that it is not audible to the common listener. These additional techniques are not implemented in the CD-ROM drives, thus the uncorrected data is given back.

意訳:
Q:ウチの再生専用機で音飛びもなく再生できているCDがリッピングに失敗するのはなぜですか?

A:再生専用機は、オーバー・サンプリングやその他のエラー補正を行っています。加えてエラーが重大であった場合「エラーの隠蔽」が行われることもあります。つまり、一般的なリスナーには認識できないよう、エラーが隠されるのです。これらのテクニックはCD-ROMドライブには実装されていないので、エラー補正されていないデータが返されます。

再生専用機が読み込みに失敗した区間を「勝手に埋めてごまかす」話は噂には聞いたことがありましたが、意外なところでその存在が明言されていたものです。しかし、これをユーザが実証しようとすると、再生機内のICをハックして、動作をリアルタイムでモニタする以外に方法はなく、検証のハードルは高そうです。

次ページ:筆者私見と結論に続く

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