原文:“7 crucial EQ bands to help balance your mix” by Ian Shepherd
以下は、原著者の承諾を得て上記ページを翻訳したものです。
今回ご紹介するEQに関するお話は、私が研修生としてミックスを学び始めたときにおおまかな指針として教わったものです。それぞれのEQバンドは、ミックスや楽器の質感に影響します。
この投稿ではのちほど、Joe Gilder氏によるわかりやすいビデオもご紹介します。先日、私が投稿した”Using compression”(コンプレッサの使い方)に載せたビデオと同様、EQのセッティングやパラメータに関するわかりやすい解説と、現実のシチュエーションに即した実例が紹介されています。デモンストレーションにはPro Toolsが使用されますが、このテクニックはほかのDAWにも流用可能です。
詳細に入る前に、以下のお話は考え方やガイドライン、あるいは開始点にすぎないことを強調しておきます。EQの黄金律を覚えておきましょう。
「バランスがすべてです」
考えなしに100Hzをブーストして、低域がふくよかになることを期待するのは間違っています。それぞれの帯域が、ほかとバランスがとれているようにして、各楽器が競合することなくお互いを補完している状態をつくることがカギです。これは、必要とあればパート間で衝突する周波数をカットすることを意味します。たとえば、ハイハットのマイクであれば1kHz以下はすべてカットしても問題ないでしょう。
特に重要なのは、200~2kHzの中域のバランスを整えることです。2kHz付近は耳が最も敏感な領域であり、このあたりをしっかり作り込まなければ、ウォームで自然、かつリアルなサウンドを作ることはできません。
重要な帯域と、それぞれの音
50~60 Hz
- キックドラムを踏み込む音
- ベースラインの轟く音
- ダブ、ダブステップ、レゲエで最も重要な帯域!
- 多すぎればスピーカはパタつき、ミックスはブヨブヨに
- 少なすぎると重量感と深みを欠く
100~200 Hz
- スネアのパンチ
- たいていのパートに豊かさと輝き(bloom)を加える
- 多すぎるとブーミーになったりぼんやりしたり
- 少なすぎると細く、冷たい感じに
200~500 Hz
- ギター、ボーカル、ピアノのウォームさや重量感
- 多すぎると濁ったり混雑した感じに
- 少なすぎると細く、弱い感じに
500~1,000 Hz
- 最もトリッキーな帯域
- 多くのパートのボディと音色にまつわる
- 多すぎると中空であったり、鼻にかかったような音に
- 少なすぎると細く、耳ざわりに
2kHz
- ギターやボーカルのエッジ
- 攻撃的であると同時に、明瞭度にもつながる
- 多すぎると耳が痛い!
- 少なすぎるとやわらかかったり、消音されたような音に
5~10 kHz
- 明瞭度、開放感、生命感を加える
- ドラム…特にスネアのトップエンドにおいて重要
- 多すぎるとザラついたり、引っ掻くような音に
- 少なすぎると存在感やエネルギーを欠く
16 kHz
- エアー感やきらめきを加える
- たいていは高すぎてきこえない
- 多すぎると人工的、過剰、あるいはシュワシュワした感じに
- 少なすぎると、鈍く、息苦しい感じに
EQの使い方:セッティングとパラメータ
ではここで、Joeのビデオをご覧いただきましょう。
このビデオに私からひとつだけ付け加えるなら、途中で述べられる「ミックスにおける、必要なEQの判断のしかた」に対してです。はじめに方向性を決めるときにだけトラックをソロにします。次にソロを解除し、全体の中でも意図したとおりに機能しているかどうかを評価します。もうひとつ、Joeのようなアプローチでローカットを使うときは、過剰な処理により楽器の自然さが失われないよう注意してください。
ニュートンの<EQ>第三法則
もちろん、ここまでの話は氷山の一角にすぎません。上記すべてのコメントには例外やもっと注意すべき点、代替手段などがあります。
バランスに話を戻すと、常に覚えておいていただきたいのは、
すべてのEQムーブに対して、反作用が生じる
…ということです。
たとえば、2kHzを加えすぎると、最終的にはなんでも細く、耳に痛くなります。これを補うために100Hzを加えると、中域が空洞のようになり、音は細く、実体を欠いたような感じになります。そこで500Hzを加えると、始めに近い状態に戻ってしまいます。ただし、なにかしら処理されたような、不自然な感じになっていることでしょう。
最後に、もうひとつヒントを記しておきます。
Less is more!(より少ないことは、より豊かなこと)